【No.10】
「別れよう?先生」
「は?」
「私、自信ないんです、
こんなにも先生に想われて、
それに応えれる自信が無い。」
「何言ってんだよ、冗談だろ?」
「冗談なんか、いいませんよ。」
「………」
「さよなら、先生」
光が導く世界に
「これで、良かったよね…お兄ちゃん…」
「あぁ、七瀬は間違ってねぇ、
天堂先生が幸せになるためだ」
話はさかのぼると1ヶ月、私の病気が発覚した。しかも、よりにもよって心臓病だって。今までとっても元気だったのに、こうやって突然、やってくるものなんだね。患者さんの気持ちが、今までよりももっと、分かった気がする。好きな人には幸せになってもらいたい。
「今日七瀬の同級生が見舞いに来るってよ?」
「ほんと?ふふ、楽しみだなぁ…」
「お母さんちょっと下で飲み物買ってくるわ、
なんかほしいもんある?七瀬。」
「ううん、大丈夫。」
クシャッといつも通りに笑って返事する。だって、いつも通りに接して欲しいもん。悲しい思いさせたくないもん。家族にはずっと笑ってて欲しい、天堂先生にも。
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「七瀬がやめた?」
「はい、佐倉さん、
私にも何も教えてくれてなくて、、、
天堂先生なら何か知ってると思って…、」
「……」
「その顔、何か知ってるんですね…?
教えてくださいっ、お願いします…」
「…七瀬と、別れた……」
「え?」
「ちょっとそれってっ…!」
「勇者ちゃんの事振ったの?」
「…いや、振られた」
「え!?」
「まさかの振られた方!?」
「勇者が!?あんなにベタ惚れだったのにっ…?」
「家の事で何かあったのかしら…」
「天堂、お前大丈夫か?」
「………」
「天堂先生…」
「実家行ってみる」
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「わざわざ来てくださって、
ありがとうございます…」
「いえ、すいません、突然おしかけて。」
「…来たばかりなのにごめんなさい、
七瀬とは、1度連絡ついたんですけど、
それから全然連絡取れなくて…」
「……そうなんですか」
「1回だけついた連絡では、
仕事をやめたっていうのと、
天堂先生との婚約を破棄したって聞いて…
もし、実家に天堂先生が来たら、
他の誰かと幸せになってください
って、伝えてって……」
「…他の誰かと……」
ごめんなさい、天堂先生。でも貴方のためでもあるんです。七瀬は生きれるかどうか分からない。だから、他の誰かと幸せになってほしい。
「それは、無理そうです…」
「……」
「数年前、彼女を病気で亡くしたんです…」
「え…?」
「それからずっと、
心を閉ざして生きていました。
そんな俺を七瀬さんが
助けてくれました。」
「七瀬が…」
「だから、彼女を失ったら、
本当に心が壊れそうで……。
すいません、自分の事しか考えていませんね…。
俺には、七瀬さんが必要なんです。」
知らなかった…。最初、七瀬の病気を知った時、すぐに天堂先生と別れなさいと、言った。けどあの子は、泣きながら言っていた、離れたくない、私には天堂先生が必要で、天堂先生も私を必要としてくれているって。本当にその通りだわ…。
「ごめんなさい…」
「え?」
「今まで話したのは全部嘘…」
「……」
「あの子本当は…、病気なの…。」
「……七瀬が………?」
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「七瀬」
「お母さん…忙しいんだから
来なくていいって言ったじゃん」
「でも七瀬暇でしょ?
ずーーっとここで寝てるなんて。
だからほら、最近有名なチーズタルト、
買ってきたわよ??」
「チーズタルト!?ふふ、楽しみ♪」
「……七瀬あのね、
今日はお客さんが来てるのよ」
「お客さん…?え、先生……?」
「……」
「お母さん外出てるわね」
「……先生、なんで。」
「全部お義母さんに聞いた、このバカ。」
「…ごめんなさい
もう辛い思いしてほしくなくて。」
「俺からしたら
七瀬に嫌われる方がもっと辛い事だ」
「……せんせぃ」
先生が涙目になっている、違う、そんな思いさせたかったんじゃない。好きだから、幸せになってもらいたかった。でも、私を選んでくれるの…?
「もう離れるなって、何度言ったら分かるんだ」
「もう、離れませんから……
泣かないでください……」
「泣いてない…」
「ふふ…、嘘つき…」
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「今日よね?確か。勇者が帰ってくるの」
「そうですね、元気かなぁ」
「元気になったから帰ってくるんでしょ、
また騒がしい循環器内科になるわね♪」
「そうですね!」
「皆さん!お久しぶりです!」
「お!勇者じゃん!」
「おかえり!勇者ちゃん!」
「ただいまです!」
「佐倉さん…」
「結華ちゃん…」
「困るって言ったじゃん…」
「わー!ごめん!泣かないでっ!」
「ふふ、酒井さん可愛い〜」
「ツンデレだもんね〜」
「てか勇者それ!指輪…?」
「あ、はい♪留学前に貰ったものです。
1度病気の事バレないように返したんですけど、
また、指輪付けてくれて……。」
「幸せそうで何よりね♪」
「はい♪」
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2021.08.08 06:25