【No.6】限定小説
「おかえりなさい、浬さん」
「七瀬…疲れた…」
「ふふふ、出張お疲れ様です♪」
結婚して3年が経った、幸せで幸せで、頑張って勉強したあの頃の自分を褒めてやりたい。あの時の努力のおかげで、また浬さんに出会えて、こうして今ものすごく幸せなんだよって。そして一歳半の女の子、るねという、大切な宝物ができた。
「るねは?」
「寝てますよ、今日はぐっすりです」
「そうか…」
「明日は休みもらってるんですよね?
そんな悲しい顔しなくても大丈夫じゃないですか」
「そうだけど、るねに申し訳ないと思ってな…
普段も中々遊んでやれないし、
父親として何にもしてやれない。」
「ふふ、欲張りすぎですよ
疲れてるんでしょうから、
今日はゆっくり休んでください」
「そうする…」
ガッカリしながらお風呂場へ消えた浬さん、その背中が本当に愛おしい。可愛いなぁ、家族思いで仕事も熱心で医者としても人間としても本当に尊敬する。こんなに素敵な人と結婚できて、私は幸せだ。
その笑顔が好きで。
「美味しいですか?」
「美味い」
「よかったぁ」
妻の七瀬は、本当に努力家だ。俺は仕事が忙しくて家を開ける事が多く、育児や家事を全てを七瀬に任せてしまっている。それでも文句1つも言わずに、家に俺が帰ってきた時、笑顔で出迎えてきてくれる。そんな七瀬を見ていつも尊敬している。
「ふふふ、浬さんが笑ってるの好きです」
「急にどうした」
「なんか思ったんです、
幸せだなぁって…、その言葉を、
口にするだけで涙がでてきそうなくらい。」
俺も、笑っている七瀬が好きだ、今、涙を必死にこらえて笑う七瀬、その笑顔じゃないんだ、心から本当に笑っている顔が好き、そんな辛そうな顔するな、、
「大丈夫、みのりもきっと喜んでるよ」
「そうですか…?」
七瀬は、みのりの噂を病院で前に聞いたらしい、仕事も家事も、全てが完璧な人だと。それは間違っていない、でもその話を聞いてから七瀬は、それがプレッシャーになってしまったんだろうか、全てを完璧にこなそうとする。人間なんだから人それぞれ違うのに、純粋に七瀬が好きなだけなのに。みのりと重ねて七瀬を見た事なんてないのに。
「七瀬、俺は七瀬が好きだ、
そのままの七瀬が好きだ。」
「浬さん…」
「元気よく笑って、幸せそうにしてる七瀬が好きだ。
だからそんな顔見たくない、」
「……」
「完璧じゃなくていい、俺も手伝うから、
全部自分で背負おうとするな。」
「…ありがとうございます、
やっぱり、バレバレでしたか。」
あぁ、その笑顔だ、俺が見たかった笑顔は。その笑顔が好きで、見てると幸せで、元気にしてくれて…。俺には持っていないものだ。
「食べ終わったら2人で映画でもゆったり見ないか?」
「いいんですか?寝なくても。」
「明日るねと昼寝すればいい。」
「ふふ、嬉しいです。」
家でゆったりと、映画デートでもするか。
0コメント